2016年1月21日木曜日

坂東蛍子、日常に飽き飽き

坂東蛍子、日常に飽き飽き
神西亜樹
新潮文庫nex

★☆☆☆☆

 大人向けジュブナイルが流行っている。
 大した根拠のない個人的推測ではあるが・・・。
 『ビブリア古書堂の事件手帖』のヒットに乗っかって、色んな出版社が、大人をターゲットにしたライトノベルレーベルを立ち上げて行った感じか。
 活字離れが叫ばれる半面、スマホ族も増えている。
 スマホに表示されるのは文章であり、活字だ。
 今の大人も、「字を読む」ことは嫌いではないのだ。
 ただ、読みやすい本を知らないだけで。
 ライトノベルは読みやすい。
 ライトノベルは子供(中高生)向けだ。
 じゃあ、大人向けの読みやすいレーベルを立ち上げればよくね?
 そんな感じかなぁ。
 ・・・で、当たったのが『ビブリア古書堂の事件手帖』、日常の謎系のミステリである。
 似た毛色の作品がわっとあふれた昨今。
 一ジャンルに秀でた女性探偵と、駆け出しの男性ワトソン役のコンビで、謎を解くスタイル。
 この辺りの設定は、変に弄らない方が面白い。
 オンリーワンにも、ナンバーワンにも成れないかもしれないが、もっともっと大切な、安定した面白さを発揮するシリーズになりえるのだ。
 ここのところ、ハズレなくそれ系を引いてこれたので、この本もそんなつもりで購入。

>その女子高生、名は坂東蛍子。
>容姿端麗、学業優秀、運動万能ながら、
>道を歩けば事件に当たる
>疾風怒濤の主人公である。

 タイトルから、あおりから、あらすじまで、なんとなくそれ系を彷彿させるように感じた。
 第1話のはじまりも、如何にもミステリな感じでスタートする。
 ・・・
 まさか、不条理SFとは思いもしなかった。
 最初から不条理SFのつもりで読めば少しは感想も違ったかもしれないが・・・。
 や。不条理SFとしても・・・。
 いらない描写も多いし、投げっぱなしで全然生きていない伏線っぽい文章もそこここにあるし。
 うーん、うーん、うーん。
 
 ネット小説を再構築して文芸に落とし込んだ作品らしい。
 再構築にあたって、もっと「文芸」寄りに調整すれば面白くなった気がしなくもない。
 まぁね、ネット小説として既に人気がある文体を、完全に別のモノにしてしまったら、この作家が書く意味も無くなってしまうわけで、匙加減も難しいのだろうけどね。
 ・・・まぁ、なら、もっと不条理SFだってわかる売り方すればいいのに!

 あーでもあれか。
 舞城王太郎とかいるからな。
 今は、これもミステリの一ジャンルだと言い張られれば、否定するのもメンドクサイ。

 こっち系の小説も嫌いじゃないんだけどね、嫌いじゃないだけに、もっとうまく表現できたんじゃないかと残念に思う。
 続編もたくさん出ているようなんだけど、わたしは・・・もういいや。

 ・・・ネットで感想を追いかけると、面白いように真っ二つ。
 大絶賛と、全否定。
 ただ、まぁ当然、この本をミステリと間違えて買ってしまった私のような人は少ないらしく、意見は見当たらない。
 SFとして、ライトノベル風文体そのものを・・・賛否両論。

 様々な要素が、一つに収束する系の話・・・のように見せかけられているだけの気配も感じる感じ。
 ご都合全開の展開も、もうひと工夫あれば、面白くなったと思うのになぁ。
 何かの仕掛けがあると思って最後まで読んで、ただのご都合だった感想。
 例によって、具体的には何の紹介もしていないが、雰囲気は伝えられたと思うんだけれど、どうでしょう。


 しゃべって動くぬいぐるみや、実体に干渉できる幽霊なんかが、登場するお話。


☆三つ以上の良かった点☆
・破天荒な主人公的な割に実は全然地味で活躍しない主人公なギャップ。
・巧いことまとまっているようで、ご都合の塊のような絶妙なバランス。
・日常ミステリのようで、不条理SFという意外性。

☆猿山式キャッチコピー☆
 坂東蛍子のなんでもない日常。

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