クローバー・レイン
大崎梢
ポプラ文庫
読書感想日記★★★☆☆
書店員や出版社営業員のミステリに定評のある大崎梢が、編集者を主人公に据えた一冊。
本屋・出版系のミステリなら間違いがない人。
読み方によっては、傑作にも駄作にも読み取れてしまいそう。
主人公は、老舗出版社に勤めるベテランではあるが、配置換えで編集者になってからはようやく仕事をこなせるようになったぐらいの人。
偶然、落ち目の作家の、「読めば絶対に感動できる作品」に出会った。
どうしても、自分の手で本にしたい・・・!
そんな物語。
・・・
老舗出版社だから、確実に売れる作品しか本にしない。
そこになんとか風穴を開けて、出版にこぎつけたとしても・・・。
確実に売れる本しか、熱を入れて営業しない。
そんな社風と戦う・・・と言うと、ある意味社会派なのかな。
でも、この前提の「読めば確実に感動できる作品」ってのが受け入れられるかがポイントかな。
受け入れられれば、傑作。
受け入れられなければ、そんな作品あるわけないだろ?ってしらけちゃうのかな。
どんな作品だって好き嫌いがあり、確実なものはないんだけれど、この小説の場合、この前提があってこそかなと思わないでもない。
「読めば確実に感動できる作品」であっても、読まれなければ何万冊もの本の中の一冊として埋もれていくだけになる。
出版界、読書家であればある程、落ち目の作家が落ち目であることを知ってしまっているわけで。
わざわざ時間を割いて、落ち目の作家の本を読むぐらいなら、旬の作家の作品を優先してしまう。
如何にするか。
そんな作品・・・でもあり、その陰に散りばめられた、人物背景を読ませる部分もあるドラマ。
出版界の世界が垣間見られるのも、本好きをくすぐる要素。
作家を志す人へ、出版っていうのは、作家志望者が思っているほど、作家の自由にはならないって部分まで。
小説は、芸術作品であると同時に、商品でもあるわけで。
どんなに素晴らしくても、売れそうにないもの労力は避けない。
売れそうもない完成品も・・・。
まぁ、アレだ。
タイトルからどんな内容かさっぱりわからない・・・そんな人に、出版界は編集者が主人公だよって部分が伝われば、大崎梢ファンには伝わるかな。
それ以外の人には…熱血編集者が、老舗出版社で社風に合わない作品を如何に捌いていくかという物語ってな紹介ぐらいがいいのかな。
程々に気に入った一冊。
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